06.2000年以降/新世代の誕生? / 
~ ”きいてみ~よ!” イタリアPOPSのススメ 2012 ~ 第6回
《Piccola RADIO-ITALIA(ピッコラ・ラディオ=イタリア)》

イタリアのポピュラー音楽は、1970年代に大きな変質を遂げ、その牽引役となったカンタウトーレ(シンガーソングライター)たちが、そのまま長らく第一線で活躍し続ける時代が続いた結果、1990年代頃には、気が付けばTOPスターはほとんど40代以上という実態となっていました。一方、後進の歌手たちは30歳前後までは新人扱いのため、特に女性歌手が育たず、中年男性カンタウトーレばかりが活躍する様相を呈していました。

しかし、新時代を牽引し、神格化さえしていた2人の大物カンタウトーレ、Lucio Battisti(ルチォ・バッティスティ/ 1943-1998)とFabrizio De Adre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ/ 1940-1999)が相次いで他界すると、明らかに一つの時代が終わったかのような様相を呈しました。

そして1999年に突如シーンに現れた十代のメンバーで構成されたボーイズバンドLunapop(ルナポップ)が空前の大ブレイクとなり、新時代の幕開けを予感させてくれました。

※詳細は本コラムの過去記事をご参照ください。
『05.1990年代の光と闇』

2001年に民放Mediasetで放映開始されたTV番組「Saranno famosi(意:彼らは有名になるかも)」は、歌手、ダンサー、役者などを目指す18歳から25歳の若者20名ほどを集めて、トレーニングに励む日常生活などを6カ月に渡ってTVカメラが追い、その成果を披露しつつ、最終的に勝敗を競う形式のタレントショーとして企画されました。

従来の新人登竜門は、1日かぜいぜい数日間の劇場等でのコンクールが主でしたが、このTV放映のタレントショーは、6ヶ月間に渡って放映されるため、そのタレントの芸能の才だけでなく人間的な魅力までも全国津々浦々に知らしめることとなり、番組のフィナーレの頃には新人ながら大きな知名度と膨大なファン層を獲得する事が可能な、新たな新人登竜門となったのです。

やがて番組名を『Amici(アミーチ/意:友達)』に変え(司会者の名を冠した『Amici di Maria De Filippi(意:マリア・デ・フィリッピのアミーチ)』が正式名称)、2012年9月現在、第11シーズンまで完了し、もうすぐ第12シーズンが始まろうとしているところです。

Amici第1シーズンで優勝した歌手Dennis Fantina(デンニス・ファンティーナ)が、比較的順調にCDデビュー出来たものの、その後のシーズンは、プロの世界への橋渡しがなかなかうまくいかずにおりましたが、2008年に国営放送RAIで対抗番組となるX Factor(米『アメリカン・アイドル』に倣って英国で企画された同名番組のイタリア版)が始まると、急速にタレントショー番組出身歌手たちに注目が集まり、ヒット曲が連発するようになります。

2008年の第1回X Factorで第2位となったGiusy Ferreri(ジゥズィ・フェッレーリ/当時29歳)のデビュー曲はチャート1位にランキングし、瞬く間にゴールドディスクも獲得し、タレントショー出身歌手ブームの口火を切る役割を果たしました。



同2008年のAmici第7シーズンで優勝したMarco Carta(マルコ・カルタ/当時23歳)は、翌2009年のサンレモ音楽祭に出場すると、いきなり総合優勝を勝ち取る快挙を成し遂げます。



2010年のサンレモ音楽祭は、まさにタレントショー出身歌手がこぞって参加しただけでなく、眼を見張る成績を残します。総合優勝したValerio Scanu(ヴァレリオ・スカーヌ/当時20歳)はAmici出身で、その優勝曲の作者は同じAmici出身のカンタウトーレPierdavide Carone(ピエルダヴィデ・カローネ/当時22歳)、一方、X Factor出身組は、総合3位のMarco Mengoni(マルコ・メンゴーニ/当時22歳)、入賞したNoemi(ノエミ/当時28歳)、新人部門優勝したTony Maiello(トニー・マイエッロ/当時21歳)と、大量の入賞者を排出しました。









2011年のサンレモ音楽祭は、2年連続でAmici出身者が優勝する反動もあってか、ベテランカンタウトーレRoberto Vecchioni(ロベルト・ヴェッキォーニ/当時68歳)が優勝しましたが、2位はAmici出身のEmma(エンマ/当時27歳)がModa`との共演で、7位がX Factor出身のNathalie(ナタリー/当時32歳)、新人部門4位がX Factor出身のSerena Abrami(セレーナ・アブラミ/当時26歳)と、しっかりとタレントショー出身歌手たちが次に付けていました。









そして2012年のサンレモ音楽祭では、再びAmici出身の歌手Emma(エンマ/当時28歳)が優勝、3位がX Factor出身のNoemi(ノエミ/当時30歳)、新人部門は5歳から16歳の低年齢向けのタレントショー番組『Io canto』出身のAlessandro Casillo(アレッサンドロ・カズィッロ/当時16歳)と、再びタレントショー出身アーティストに上位を牛耳られる結果に。







2009年のAmici第8シーズンで優勝したAlessandra Amoroso(アレッサンドラ・アモローゾ/現26歳)は、今や人気・実力とも若手女性歌手No.1に育ち、いよいよ2013年にはサンレモ音楽祭に初出場するという噂もあります。



このように2001年から始まった新人発掘タレントショー番組は、特に2008年頃から威力を発揮し始め、ここ30年ほどイタリア音楽界に蔓延していた若手が育たない状況を払拭し、強力な新人登竜門として台風の目となって来た事実があります。

しかしながら、タレントショー出身の歌手たちが今後、どこまで賞味期限を延ばせるか、さらにどれだけ成長するかは、まだまだ未知数なので、懐疑的な声も良く聞こえて来る現状もあります。特にタレントショー出身者は、曲を書かない歌手専業者も目立つので、良い曲が廻って来なければ、歌手生命に取って命取りと成りかねませんから。

ベテラン勢は相変わらず精力的に活動を続けており、新作アルバムを出せば当たり前のように初登場でチャートの上位にランクインする状態です。

Adriano Celentano(アドリアーノチェレンターノ/74歳)、Mina(ミーナ/72歳)、Gianni Morandi(ジァンニ・モランディ/68歳)ら1960年代から活躍するスターたちを頂点に、Claudio Baglioni(クラウディオ・バリォーニ/61歳)やRenato Zero(レナート・ゼロ/62歳)ら1970年代デビューのカンタウトーレ達とイタリアのバンドの雄となるPooh(プー)、Zucchero(ズッケロ/57歳)、Vasco Rossi(ヴァスコ・ロッスィ/60歳)、Eros Ramazzotti(エロス・ラマッツォッティ/49歳)、Biagio Antonacci(ビァジォ・アントナッチ/49歳)ら1980年代デビュー組、イタリアRapの先駆者Jovanotti(ジォヴァノッティ/46歳)、Laura Pausini(ラウラ・パウズィーニ/38歳)、Andrea Bocelli(アンッドレア・ボチェッリ/54歳)、Giorgia(ジォルジァ/41歳)、Ligabue(リガブエ/52歳)ら1990年代以降に頭角を現し始めたアーティストたちなどが、ビッグスターとしてシーンを牽引しています。

2012年9月22日は14のビッグスターらが一堂に会し、15万人超の大観衆を集め、同年5月のエミリア州地震のチャリティコンサートを成功させています。





さて、本コラムでは全4回に渡り、日本でイタリアPOPSが聴かれなくなり、情報も入って来なくなった1970年代以降のイタリア音楽事情について連載して来ました。過去の記事についてもぜひお目通しください。

※文中のアーティストの年齢は、その時点での誕生日の到来を考慮せず、同年内に達する年齢で表記しています。

Piccola RADIO-ITALIA
YoshioAntonio こと 磐佐良雄


***** 『第89回 イタリアPOPSフェスタ』開催のお知らせ(予定の内容) *****
★イタリアで最近リリースされた話題作から
日時:2012年10月27日(土) 17:15~21:30 (16:45開場)
会場:東京・JR亀戸駅 徒歩2分
定員:先着20名様
参加費:1,000円
※お申込み&詳細は以下のサイトまで。
http://piccola-radio-italia.com/


”きいてみ~よ!” 
~ イタリアPOPSのススメ 2012 ~ 第6回
2012-10-05

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