11.サンレモ音楽祭 / ~ イタリア語の歌を聴いてみませんか? ~ 第11回
《L'amante della musica》

日本では年末になると、日本レコード大賞をはじめとする大きな音楽賞イベントがテレビで放送される。 ぼくも子供の頃から、年の瀬にレコード大賞や(今はなき)日本歌謡大賞、そしておなじみ紅白歌合戦をなんとなく眺めながら、去り行く年を過ごしていた。 基本的に、これらは「歌謡曲」という音楽ジャンルを土台をして与えられる賞であり、イベントである。 そのせいか、ポピュラー音楽の多様化、細分化とともに、こうした歌謡曲というジャンルは拡散してしまい、 もはや以前のようなはっきりとした枠組みを失ってしまったような気がする。 そもそも歌謡曲とはいったい何なのか、どういう音楽ジャンルなのか、ぼくはうまく説明できないし、 実のところ、そうしたジャンルの定義はよく分からない。 しかし、ジャンル分けがどうあれ、賞を持つ意味がどうあれ、多くの歌手が一同に会して歌を披露するというのはやはり魅力的だと思う。 深く考える必要はない。自分の知らない歌に出会えるチャンスでもあるからなのだ。

さて、イタリアでは毎年2月になるとサンレモ音楽祭が開催される。 ぼくは毎年、どんなミュージシャンが登場するのか、楽しみにしている。 今もこのコラムを書きながらわくわくしているわけだが、今回はこの音楽祭について簡単に紹介することにしよう。 サンレモ音楽祭とは、イタリア北西部のリグーリア州、リヴィエラ海岸に位置するサンレモで行なわれている音楽イベントだ。 一年中温暖な気候に恵まれたサンレモはリゾート地として有名な場所だが、サンレモといえばサンレモ音楽祭、というぐらいに、 このイベントは日本でもよく知られている。 サンレモ音楽祭は、毎年イタリア国営放送RAIでテレビ中継されているし、 近年はインターネットで視聴することができる(期間限定)。

1951年に始まったサンレモ音楽祭は長い歴史を持ち、今年2009年は59回目の開催だ。 日本レコード大賞などとは異なり、このイベントは一夜では終わらない。 今年は2月17日から21日まで毎晩行なわれ、最終日に新人賞と大賞が選ばれることになる。 このコラムで紹介してきた歌手の多くが、この音楽祭をステップに人気を獲得しているし、数々のヒット曲がこの音楽祭から誕生した。 この音楽祭の歴史を追えば、イタリア・ポップスの歴史的な流れをつかむことができるといっても過言ではないだろう。 日本でもそうだが、こうした歌謡祭は斜陽を迎えていると言われるが、 それでもまだまだ人々の注目を集めていることは間違いない。

1951年の第1回サンレモ音楽祭では参加したミュージシャンもわずかばかりだったそうだが、 その記念すべき第1回目の大賞受賞曲はNilla Pizziの歌う「Grazie dei fiori」だ。

■Nilla Pizzi「Grazie dei fiori」


日本でも有名なDomenico Modugno「Volare (Nel blu dipinto blu)」(1958年)や、 このコラムで紹介したGigliola Cinquetti「Non ho l'eta'」(1964年)もサンレモ音楽祭の大賞受賞曲である。 そして昨年2008年の大賞曲は、Gio' Di Tonno とLola Ponceのドラマチックなデュエット曲「Colpo di Fulmine」。 この曲の作詞作曲を担当したのが、本コラムでも紹介したGianna Nanniniである、曲の冒頭からして実に彼女らしい曲だと思う。

■Gio' Di Tonno e Lola Ponce「Colpo di Fulmine」

そして2008年の新人賞は、LucaとDiegoの兄弟デュオSonohraの「L'Amore」。 ピアノとアコースティックギターが印象的なバラード曲。 二人はルックスもいいし、きちんと宣伝すれば日本でも人気が出ると思うのだが、どうだろう。

■Sonohra「L'Amore」

ちなみに、1965年の第15回のサンレモ音楽祭では、何と、日本の歌手、伊東ゆかりが「L'amore ha i tuoi occhi」(恋する瞳)を歌い、入賞を果たしている。

■伊東ゆかり「L'amore ha i tuoi occhi」


サンレモ音楽祭関連曲を収録したコンピレーションCDも毎年発売されているので、それを聴けばその年のヒット曲をチェックできる。

■Sanremo 2008 (CD)

『Sanremo 2008』


■Super Sanremo 2008 (CD)

『Super Sanremo 2008』


また、サンレモ音楽祭から派生したイベントに、ユーロヴィジョンがある。 これは欧州放送連合が主催する国対抗の音楽祭で、1956年から毎年行なわれている。 これまで2度、イタリアが優勝しており、1964年にはおなじみGigliola Cinquetti「Non ho eta'」、 そして1990年にToto Cutugno「Insieme 1992」が優勝曲に選出された。

■Toto Cutugno「Insieme 1992」

優勝した国で次回のユーロヴィジョン音楽祭が開催されるのが原則である。 去年はロシアが優勝したために、今年2009年は5月にモスクワで開催される。 しかし残念なことに、近年イタリアは参加していない。 そういえば、昔は世界歌謡祭なるものが日本で開催されていて(1989年まで)、 1978年に円広志「夢想花」がグランプリを受賞したことなど思い出す。 世界歌謡祭は、「東洋のユーロヴィジョン」とも呼ばれていた。 イタリア関連では、大御所ロック・グループのI Poohが1983年の第14回世界歌謡祭参加のために来日したこともあった。

■The Story of Eurovision (CD)

『The Story of Eurovision』


ユーロヴィジョン関連曲を収録したCD

最後にもう一つ、イタリアの大きな音楽祭に触れておこう。 それは「ゼッキーノ・ドーロ」(Zecchino d'Oro)である。 これは1959年から開催されている音楽祭であり、子供(12歳以下)の歌を対象としたものである。 2008年の第51回大会は、11月25日から29日にかけて行なわれた。 実はこの音楽祭の入賞曲に訳詞が付けられて日本でも人気を博したものが数多くある。 例えば、誰もが知っているであろう「黒ネコのタンゴ」は、1969年のゼッキーノ・ドーロの入賞曲「Volevo Un Gatto Nero」(黒ネコがほしかった)だ。 それ以外にもたくさんの歌が、NHKのTV番組「みんなのうた」を通して、日本に伝えられた。

■「Volevo Un Gatto Nero」


近年では、2003年のゼッキーノ・ドーロ優勝曲「Le Tagliatelle Di Nonna Pina」(ピーナおばあちゃんのタリアテッレ)が子供たちに大人気で、 もはや子供の歌の定番になっているそうだ。 勉強やお稽古ごとで忙しい子供たち(日本と同じ!)、 でもおばあちゃんの作った栄養万点のタリアテッレ(きしめんのような細長く平べったいパスタ)を食べれば元気一杯!と歌った、 このかわいくノリのいい歌を聴けば、人気が出るのもうなずける。

■「Le Tagliatelle Di Nonna Pina」

NHK「みんなのうた」のようにアニメーションを付けたDVDもあり、今のところ6巻まで発売されている。

■I Cartoni dello Zecchino d'Oro 1(DVD)

『I Cartoni dello Zecchino d'Oro 1』


さて、サンレモ音楽祭をはじめ、いくつかの音楽祭を簡単に見てきたわけだが、 今年のサンレモ音楽祭では、いったいどのミュージシャンが大賞を獲得するだろうか。 はるか遠く離れた日本で、音楽祭のサイトを見ながら予想するのもなかなか楽しいものだ。

■サンレモ音楽祭の公式サイト

http://www.rai.it/programmi/sanremo/



イタリア音楽コラム
~ イタリア語の歌を聴いてみませんか? ~ 第11回
2009-02-16

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