09.愛のブルー・トレイン / ~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第9回
《L'amante della musica》

最近、『世界の車窓から』というテレビ番組をよく見ています。 一回が正味二分程度しかない短い旅行番組なのですが、毎日少しずつ、] 列車に乗って旅をしている気分を味わえて、なかなか気に入っています。 11月と12月は、真夏の南イタリアを巡る旅で、ローマを出発し、イタリアを南下して、 シチリア島、そしてサルディーニャ島へ向かうようです。 テレビ画面に映し出される暖かそうな風景が、 日ごとに寒さを増してゆく日本の冬をひとときながらも忘れさせてくれて、 なんとも心地よいです。

映像に合わせて毎回違う歌や音楽がかかるのですが、今はイタリアが舞台のせいか、 たびたびイタリアの歌も流れます。 ちょうど昨日は、カタンザーロ・リド駅を出発して、 レッジョ・ディ・カラブリアに向かう回でしたが、 イタリアのシンガーソングライター、 アンジェロ・ブランドゥアルディの「La Pulce D'acqua」が流れていました。 音楽好きの方にもお勧めの番組です。

それにしても、列車の旅はいいものですね。 流れる風景を見ながら、ぼんやりと過ごす時間は格別です。 もうすぐ今年も終わってしまいますが、 年末に列車で帰省する方も大勢いることでしょう。 今回はそんな列車がらみのCMです。


1983年頃のインスタントコーヒーのCMですが、 使われている曲は、マティア・バザールの「愛のブルー・トレイン」(原題はIl treno blu)です。 歌詞の内容からすると、タイトルの「ブルー・トレイン」は、 パリ発イスタンブール駅のオリエント急行のことを指しているようです (この邦題は、ちょっと、どうでしょうかね……)。

マティア・バザールは日本でもよく知られているイタリアのポップス・グループで、 この曲はこのCMのために新しく作られたものです。 そのため、日本でのみシングル・レコードが発売され、 後に日本編集のベスト盤CDに収録されました。 それ以外では聴くことができないため、ファンのあいだでは幻の名曲とされていました。


ヴォーカルのアントネッラ・ルッジェーロの歌声がなんとも印象的です。 残念ながら、その後彼女はバンドを離れてしまいます。 マティア・バザールは何度かヴォーカルを変えながら、現在も活動を続けています。

CMでは最後の方の部分が使われていますが、その辺りの歌詞を訳すとこんな感じでしょうか?

avventurieri con l'acqua alla gola
e l'espressso d'oriente
con forza ci portera'
all'alba sulla bianca moschea
dal nero della sua riva

窮地に陥った冒険者たち
そしてオリエント急行は
私たちを力強く運んでいく
黒い海岸線から立ちのぼる
白いモスクにかかる夜明けへと


こうして歌は終わり、パリを出発したオリエント急行も、 ようやくイスタンブールに到着します。 実は、パリ‐イスタンブール間を走る急行列車はずっと前に廃止されたそうで、 さらに現在の路線も2009年内には廃止されるそうです。 日本でも利用客の減少から、次々に寝台列車が廃止になっています。 列車の音と振動を感じながら眠りに落ち、目覚めると、 朝日の中に目的地が見えてくる、 そんな寝台列車にはえもいわれぬ独特の旅情があって、ぼくは好きなのですが、 こういうニュースを見るたびに何かさびしい気持ちになってしまいます。

イタリア音楽コラム
~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第9回
2009-12-16

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