02.Area - International POPular Group / ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第2回
《L'amante della musica》

ロックってなんだろう、とふと思うことがあります。 まだはっきりとした答えを持ち合わせていませんが、それでも個人的にはロックと政治性との関わりがどうにも気になっています。 政治的主張を行なうロックを指す「ポリティカルロック」などという言葉もありますが、 どの派を支持する、どの派に反対するといった政治的立場の主張だけではなく、 何かを考えること、行動すること、人間の活動すべてに政治的なものが否応なく関わっているという強烈な自覚、 そうした自覚にロックは深く関っているのではないか。 そんなことを考えるきっかけになったのが、今回ご紹介するイタリアのAreaでした。

Area(正式名称はArea - International POPular Group)は、1972年に結成され、 中心メンバーだったDemetrio Stratosの死後、1983年に一度解散しましたが、 その後90年代に再結成しています。 フリー・ジャズ、プログレッシブ・ロック、ミクスチャー・ロック、実験音楽など、 多数の観点からの位置づけが可能なAreaは、さまざまな音楽ジャンルを取り入れる貪欲な音楽探究の姿勢と、 それを支える高い演奏技術が魅力です。 しかし何といってもAreaを世界でも稀有な個性を持ったロックバンドにしたのは、 世界各地の伝統的歌唱法を探究し、自らそれを実践したヴォーカルのDemetrio Stratosの声の力だと思います。 彼の声は西欧近代主義に亀裂を入れる野生の声だ、と評しているのを以前どこかで読んだ覚えがありますが、 Areaを聴いているとそんな気もしてきます。

このコラムシリーズで取り上げたことがある代表曲の「Luglio, agosto, settembre(nero)」のように (「イタリア語の歌を聴いてみませんか?」の第7回)、 たいていAreaのアルバムの筆頭には、ブルガリア風リズムを取り入れた疾走感溢れる曲が収録されています。 その中でもぼくの一番のお気に入りが、Demetrio Stratos在籍の最後のスタジオアルバム 『1978 Gli Dei Se Ne Vanno, Gli Arrabbiati Restano!』収録の「Il Bandito del Deserto」です。

■Area - Il Bandito del Deserto


さらにAreaの特徴は、その親共産主義的な政治姿勢にあります。 ただし、Areaの活躍した70年代のイタリアは共産党が力を持っていた時代であり、 このバンドがそうした政治理念を持っていたのはそれほど特殊なことではないのかもしれません。 Areaは共産党主催のコンサートや選挙キャンペーンに参加し、若者たちに人気を博していたそうです。 先に挙げた「Luglio, agosto, settembre(nero)」は、「settembre nero」つまり、 当時数々のテロ事件を引き起こした過激派グループ「黒い九月」を暗に示しており、 社会革命を志向する時代の気分がよく感じ取れます。 しかし、Areaは次第にそうした直接の政治活動からは距離を取り始めていきます。 1978年発表のアルバム『1978』では、歌詞を見る限り、明確な政治的な主張はかなり希薄なものになっており、 その代わりに、もっとミクロなレベルで、人間の本質に鋭い視線を向けているように思えます。

『1978』に収録された「Hommage a Violette Nozieres」は、素朴な曲調ながらも、リズムが変則的で、なかなか面白い曲です。 Violette Nozieresは両親を毒殺しようとした実在のフランス人女性であり、 当時多くのシュールレアリストがこの事件に感銘を受けたそうで、 この短い歌詞はアンドレ・ブルトンの文章から取られているようです。

■Area - Hommage a Violette Nozieres


政治との距離を少しずつ変えながら、外側から内側へ、いわば革命の音楽から音楽の革命へと方向を変えながら、 70年代を疾走したバンドがAreaでした。 1979年にDemetrio Stratosが病気で亡くなり、以後Areaは幾度かの解散と再結成を経て、 2009年に再び活動を開始します。 2011年5月に来日の予定もあったのですが、中止になってしまったのは残念です。

イタリア音楽コラム
~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第2回
2011-05-27

ページのトップへ戻る