05.Le luci della centrale elettrica / ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第5回
《L'amante della musica》

今回ご紹介するのはLe luci della centrale elettrica(発電所の光)という、ちょっと変わった名前のロックバンドです。 といっても、実はバンドではなく、Vasco Brondiのソロ・プロジェクトなのです。

Vasco Brondiは、北イタリアの小都市フェッラーラ出身のシンガーソングライター。2008年にLe luci della centrale elettrica名義での最初のアルバムを出した後、現在まで2枚のアルバムを発表。デビューアルバムである『Canzoni da spiaggia deturpata』(汚された浜辺向きの歌)は高い評価を受け、2008年のTarga Tenco(早世したシンガーソングライター、故ルイジ・テンコを記念する賞)で最優秀デビューアルバム賞を獲得しています。

このデビューアルバムの冒頭を飾るのがこの曲です。

■Lacrimogeni


アコースティックギターを中心とした非常にシンプルで短い楽曲ですが、彼のエモーショナルな歌声と相まって、非常に悲しげな曲調でありながらも、そこに込められた熱い空気を感じさせてくれます。「酸性雨の土砂降りの中、僕を水たまりに連れていってくれ、水を飲ませてくれ」というリフレインが強烈に耳に残ります。

ちなみに、このアルバムにエレキギターで参加しているGiorgio Canaliは、CCCP、CIS、PGRなど、Giovanni Lindo Ferrettiが率いていた各バンドの元メンバーでした。これらのバンド、というよりFerrettiの活動については、イタリアのロック音楽を語る上で避けて通れないものですので(と個人的には思っておりますので)、いずれ本コラムでご紹介する予定です。

次の曲もデビューアルバムからで、代表曲とされています。

■Per combattere l'acne


アルバムのタイトル「Canzoni da spiaggia deturpata」は、この曲の歌詞の一節です。穏やかな雰囲気の曲でありながらも、「チェルノブイリの痛めつけられた空」「爆発する宇宙船」など、歌詞には不穏なイメージが頻出しています。

2010年にはLe luci della centrale elettricaの2枚目のアルバム『Per Ora Noi La Chiameremo Felicita'』が発売。これも1枚目と同じ空気を漂わせた濃厚な一枚になっております。タイトルは「さしあたり僕たちはそれを幸せと呼ぶことにしよう」とでも訳しましょうか。これはフランスの詩人であり歌手である故レオ・フェレ晩年の名曲『孤独』(la solitude)の一節です。「絶望は批評の最高の形式である。さしあたり僕たちはそれを幸せと呼ぶことにしよう」という部分から引用されています。

この2枚目から1曲。

■Quando tornerai dall'estero


労災、戦争、宗教問題、難民キャンプ、地雷…… 世界に散らばった不和の断片によってこの歌詞は構成され、「おそらく君は外国から戻ってくるだろう。今、ぼくたちが言葉をかわせば、その息づかいは雨を降らせる雲になるだろう」と締めくくられます。

正直なところ、彼の詩は難解で、意味がよくわからない部分も多いのですが、戦争、貧困、社会問題、環境問題などの要素をちりばめながら、それらが日々の生活へと還元され、歌全体がメランコリックな雰囲気を漂わせる内省的な愛の歌に昇華されているように思えます。

現時点でLe luci della centrale elettricaの世界はすでに完成の域に達しているという印象も受けますが、まだアルバムは2枚、それに26歳と若く、今後どのように彼の音楽が展開されていくのか楽しみです。

イタリア音楽コラム
~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第5回
2011-08-26

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