イタリアの喜劇映画監督であるマリオ・モニチェッリの作品が、イタリア文化会館で2011年11月18(金)~20日(日)上映されました。 その際、マリオ・モニチェッリ作品について塩野七生氏による解説があり、その内容がイタリア喜劇全般の捉え方としても参考にしていただけるのではないかと掲載をお願いしたところ、 直接ご本人よりお許しをいただくことが出来ましたので、その概要を(箇条書きですが)掲載いたします。 小社発行書籍アンドレア・ヴィターリ氏による『オリーブも含めて』、『ブティックの女』をはじめとする作品群は、 このイタリア式コメディの流れをくむ作品になります。 今回の塩野七生氏の解説により、アンドレア・ヴィターリ氏の作品をさらに楽しんでいただけましたらば幸いです。
「マリオ・モニチェッリ作品上映会」 11月18日(金)18:30 塩野七生氏による解説(概要) ○日本に輸入されているイタリア映画 ・日本に輸入されている映画は、"まじめ"なものが多い ・ゴールデンウイークの「イタリア映画祭」でも毎年"まじめ"な作品がピックアップされる ・もっと、イタリアの喜劇を見ていただきたい(個人的には喜劇は好きで、すべて見た) ○喜劇と悲劇について ・喜劇(コメディ)は、悲劇の裏返し(素晴らしい喜劇は、悲劇でもある) ・ダンテの「神曲」は、直訳すると「神聖なる喜劇」 ・キケロは、上から下への落差を悲劇として表現する ・ゲーテは、水平的に民衆の日常を喜劇にする (昼に働いていた民衆が、夜に見る側になる、という水平性) ○喜劇の根源 ・精神的に自由であるためには、喜劇は、もっとも有効な手段である ・人間は、悲劇的、喜劇的、両方を求めている(そして、場所を変えていく) ○マリオ・モニチェッリの言葉(マリオによれば・・・) ・喜劇は、権威を破壊する方法である ・よって、教育的ではなく大人のもの ・喜劇を楽しむには、疑い、笑い飛ばすことができないと楽しめない (情けないところ、ダメなところを笑い飛ばしている) ○イタリア人と喜劇(その1) ・自分を笑い飛ばす「勇気」が、イタリア人にはある ・イタリア人は見た目はちゃらんぽらんに見えるが、 自分だけが正しいと思わない自己批判能力はレベルが高い ○喜劇の歴史(代表作) ・アリストファネス(アリストパネス)[古代アテナイ] ・プラウトゥス[古代ローマ] ・ボッカッチョのデカメロン[ルネッサンス] : : ・マキャベリにも喜劇がある ・ベネチアのゴルドーニ ↓ ・見方によっては、どれもバカバカしい話 ・これに特に意味付けしようとしないのがイタリア人という捉え方もある ○イタリア人と喜劇(その2) ・長く権力の座にいると、堕落するものである ・しかし堕落は意志的だが、"ゆるみ"は直せない ・イタリア人は何百年もかけて、ゆるんできたとも考えられる ○一例 ・映画「脱走大作戦」(1968年、アメリカ、出演ポール・ニューマン) ・捕虜収容所での虐待は、イタリアでは無かったらしい ・このため本来将校には脱出の義務があるが、イタリアでは脱出しなかった ・イタリア人がヒューマンに扱ったから脱出すると担当者が困ってしまうということで脱出しなかった ○イタリアの代表的な喜劇(イタリア式コメディ)監督 ・マリオ・モニチェッリ(1915-2010年) ・ルイジ・コメンチーニ(1916-2007年) ・ディーノ・リージ(1916-2008)
2011-11-29