俺が誰かだって? 軍曹だ。それが俺だ。 ここはどこかだって? それをお前に言うことは許可されていない。 そうだ、ここにいて待っていろ。 だめだ、便所には行けない。今はな。 だめだ、服を着直す事も出来ない。 だめだ、手首の手錠は外せない、頭に被せた袋もとることはできない。 泣くな。俺には効かない。 何だと? この国はクソになったって言うのか? 演説はよせ。俺には、この国は今のままで良い。 叫ぼうが俺には響かない、やめろ。ここで飽きるほど聞いて慣れているんだ。それに他の奴らも聞いちゃいない。無駄に息を切らすな。俺の言うことを聞け、その方が良い。 お前が誰それと仲間だなんて興味はない。それに結局、お前がここにいることを見るに、そいつらとの友情は何の役にも立たなかったってことだ。 当たり前だ、お前がここにいるということは、お前はこの国の敵だってことだ。 共産主義者じゃない? 説得する相手は俺じゃない。 今更、宗教を持ち出すな。今じゃようやく聖職者どもも大人しくなって、ミサのことだけを考えている。 お前からの金は受け取らない。給料から貰ってる金額で十分すぎるくらいだ。 連中がお前に触れるかって? 知らない、知るつもりもない。 ここから生きて出られるかって? 知らない、知るつもりもない。 俺が何歳かだって? 今更聞いて何になる? まあ良い、20歳だ。 何も知りたくない。 何も考えたくない。考えることは有害だ、士官学校でそう教わった。 わかった、良いだろう! 一杯だけ水を飲ませてやる、誰かに言ったら誓ってこの手でお前を殺す! 他の奴らより人間的? この俺が? 言ったはずだ、その手には俺は乗らない! 後悔しているかだと? 今更なんてことを聞きやがる! 何もするな! そう言っただろう! 違う。お前は思い違いをしている。俺の声が何だって言うんだ。俺はお前のことなんか知らない。 疑うな! 違う。俺たちは知り合いなんかじゃない、絶対にだ! 俺はお前がいたような場所に出入りするような人間じゃない。 なぜ俺の名前に拘る! だめだ、袋は外せないと言ったはずだ! やめろ! 何も思い出すな! 言うことを聞け! お前の名前なんか知りたくない! 言うな! やめろ! やめろ! けれど、俺は覚えている。 まるで別の人間として、別の世界、別の時間を生きていたような、あの日々を覚えている。 サーラ。 なぜだろう。 俺たちは12歳だった。12歳だ、信じられるか。 嵐が俺たちの上を通って行った。嵐はお前を連れ去った。
il mio 1978 (続く)
訳:亀崎 洋太(かめざき ようた / Yota Kamezaki)