お前はいつも悲しげだった。あることがお前を悩ませていた。お前の叔父がマスクを被った男たちに連れていかれて、お前の父親も怯えているんだと、お前は俺に話していた。 しかし俺の父親は国防省の役人で、軍の中に仲の良い大佐がいた。父親はその機会を利用して、新しい国営の学校に俺を入学させた。軍の学校だった。 祖国の大義のため鍛え上げられる若い精神が求められていた。全ての人にとって安心で、安全な未来がくるというような素晴らしい可能性があるのだと、親父は俺にそう言った。 俺は来るべき時代の、新しい兵士になる。その考えに惹きつけられた。サーラ、俺はお前の前に制服姿で立つ自分を想像していた。あの頃俺は無邪気で、それが素晴らしいことのように思えていた。 お前に話した時、お前の目の中で絶望が閃(ひらめ)いたのを見た。誰もが知っていた。少女はひと足先に大人になるのだと。何日か経って、俺は自分のした選択が俺たちの未来を決定づけてしまったのだと悟った。俺たちはもう会わないのだろう。 あの頃、理由の分からない空虚さに囚われていた。誰もが知っている、少年は時としてやってくる痛みの出どころを知らない。苦しんで、それで終いだ。なるようになると人生に身を任せ、さっさと忘れようとする、日常の忙しさに流されるがままに。 俺たちが最後にあった時のことすらもう覚えていない。 多分、秋も終わりに近づいた、雨の降る悲しげな日にポルティコの下でだったと思う。 短い挨拶、チャオ、他に言葉はない。それから公園には、もう誰もいなかった。皆、もうそこから離れようとしていた。全てが変わった。 あの時からお前と、俺の思い出は宙に散った言葉のように消えていき、冷たい軍の規律、政治的な刷り込み、新しい人々の顔に置き換えられていった。 今日までの人生の全ては一瞬の内に過ぎた。サーラ、今の今までだ。 違う。 俺はお前が思っているような人間ではない。 昔はお前に恋をしていた、だが今は違う。 お前が俺のことをずっと好きだったなんて、どうでも良いんだ。 俺は今、軍曹なんだ。 連中がお前を引き取りに来る。俺ができることは何もない。 なぜ俺を許そうとするんだ。 許されるべきことなんてしていない。 どうして泣いているかなんて聞く。 風邪だ。鼻水だ。 ただの風邪だ。サーラ。 そうだ。ただの風邪なんだ。それだけだ。
il mio 1978 (おわり)
訳:亀崎 洋太(かめざき ようた / Yota Kamezaki)