『紅の行列』(短編) ルイジ・リナルディ短編集より_『紅の行列』


くれないの行列』


日曜日、午前

 称賛すべきジャクソン同志は、シフトの交代で、コックバーン・タウンにいた。
 ジャクソン同志の代わりに、朝食のときからそこにいるのは、スミス司令官という男だ。まずはみなと打ち解けて、きらりと光るカラシニコフを見せびらかして、その場の雰囲気を和ませた。ラム酒の瓶を手に取り、わたしたちと一緒にトランプをしながら、自分はコスタリカ革命に参加したのだと、自慢げに冒険談を語り始めた。
 「解放の夜、サン・ホセでの祝祭がどんなだったか、きみらには想像もつくまい」スミス司令官は懐かしそうに、目には涙を浮かべて語る。「わたしの心は今もそこにある。おそらく、子どももふたりはいるだろう」

 わたしの友人のなかでは、ソレンセンが最初にキャビンに入っていった。三十分後、困惑した様子で出てきた。
 シスとともに、すぐさま彼に目をやる。
 「欧州にはまだおれの居場所がある。アルゴンだったか、キセノンだったか、どっちかよくわからないが、そこの蒸留所の作業員だ」と彼はかすかに笑みながら話した。「おれはまたイエロー市民になれるだと。その見返りに、保証を出さなきゃならない。年金の五分の一だけじゃ足らずに、やつらは腎臓まで要求してきた」
 わたしは目を見開き、口笛を吹いた。
 「それはでかしたな!」とわたしはいい加減なことを言った。「仕事に戻れるぞ!」
 実際、出戻りイエロー市民と呼ばれる者たちがどうなったかは、だれもが知っている。〝衰退過程エントロピー〟にうまく対応できなかったのだ。ただの先延ばしなのだ。それ以外では、合法的な奴隷になるしかなかった。〝個人の最高権利〟の最低限の保障は認められていたが、実際にそれを享受することは現実的には不可能だった。どんなにもがいても、また降格してしまう。どん底のカラー、レッドまで。
 「それに、腎臓がなくなれば、小便の回数も増えるし、気分爽快だってな!」
 わたしたち三人は大笑いした。そして、抱き合った。
 「幸運を祈るよ」と彼は言った。
 「ときどき、手紙を書くよ」
 ソレンセンは微笑む。そして、いなくなった。
 彼を見たのはそれが最後だった。
 そのあとすぐに、海に身を投げたのだろう。わたしには知る由もない。わたしが知っているのは、シスはその船には乗らなかったということだけだ。しばらく紅衛兵は彼を探したが、やがて諦めた。
 その遺体がどこにあるにせよ、コックバーン・タウンから戻った、称賛すべきジャクソン同志にとっては、月曜日、最初の厄介事になることは間違いない。
 昼めしどきに、シスが面談から戻るのを見た。もちろん、彼は微笑んでいる。
 「家に帰る」と彼は言った。わたしは彼の目をじっと見た。
 ソレンセンのことですでに傷ついていたわたしの心は、張り裂けそうになった。「シス、すぐに反改革派の協会にメールを出すんだ。カトリック、長老派、エホバの証人にも送ろう。世界を動かすんだ。頼む。ローマ法王は亡命先から、コスタリカの難民よりも多くの老人をブラジルに受け入れさせた。もう一度、できれば……」
 シスはわたしの言葉を遮った。
 「やめておけ。おれたちみたいな年寄りが欧州には何人いるか知ってるか? 連邦政府が入れ替えようとしている数より、ずっと多いんだ。そこいらじゅうにいる老人、若者から資源を奪うがめつい老人、生に執着し、互いに争い合う老人ども。おれたちをどこ追いやればいいのか、わからないのさ。ローマ法王でさえもな。おれたちは多すぎるんだ。おれのいたところのガキどもがなんて言ってたか知ってるか? 老人は若いうちに殺されているべきだった。おれの時代はもう終わった。今も、これからもそうだ。やつらが勝った。そして、おれは潔く負けた」
 わたしの目には涙が浮かんでいた。シスはわたしを抱きしめる。
 「もう行かなくちゃ。さらば、友よ。サッカーの試合が恋しくなるな」
 わたしは、シスが振り返ることもなく、何も持たずに、いつもと違う足取りで去っていくのを眺めていた。
 船がコックバーン・タウンとこちらの間を行き来して、少人数ずつわたしたちを運んでいく。
 わたしは施設のなかをぶらぶらと歩きながら、煙草を吸い、酒を飲んで、自分の順番がくるのを待っていた。
 友人がいなくなり、わたしは自分を見失ったような気がした。別れを悼み、泣き叫ぶうちに、どうすればいいのかわからなくなった。
 わたしは地面に崩れ落ちた。今では多くの人が、施設の左右を分ける廊下で寝泊まりするようになっていた。何人かは宿舎からギターを持ち出し、シートを広げて、〝変革〟前の懐かしい古い歌を歌い始めた。
 ソーシャルセンターの壁掛け時計を見た。午後六時だ。わたしの番がやってきた。キャビンの番号は六だ。
 そして六時ちょうどになると、ジーナが七号室から出てきた。
 わたしの前を横切ると、わたしを見つめて微笑んだ。
 「別の人生に」
 そこでわたしは彼女の手をとり、キスをした。言いたいことは山ほどあったが、黙っていた。いつものことだ。
 ひとりの紅衛兵がわたしを急かした。「早くしろ。時間がないんだ!」
 わたしは彼女を残して、なかに入った。
 わたしは最後にもう一度振り返ってから、キャビンのドアを閉めた。ジーナはもうそこにはいなかった。それ以来、彼女を見ることはなかった。


Rinaldi Cremisi
(続く)

訳:高野 由美(たかの ゆみ / Yumi Takano)