午後、僕はすっかり集中力を失い、ぼうっとして過ごした。思い起こすのは午前中のことばかりだった。 クラウディアの態度がさっぱり理解できなかった。彼女に何が起こったんだろう? 僕が彼女に何かしたんだろうか? 僕に非があるんじゃないかと、自分自身を調べあげた。 普段の僕の「弱気な衝動性」を除けば、けれど、そのせいで彼女にとって僕は、うっとうしいというより愉快な奴だろうなと思えたし、僕の挙動に、明らかな過失を見出すことはできなかった。 実は彼氏がいた? 嫉妬の青白い閃光が走った。なんの証拠も兆候もなかった。けれど、彼女と知り合って、まだ、ほんの半年というのも事実だった。 そんな考えを追いやり、気を紛らわそうと、テレビをつけた。 木星に向け発射されたドイツの探査機関連の報道をしばらく見て、チャンネルを変えると、ニュース番組で、当時流行っていた退屈でうんざりする話題、アメリカにおける我が国の黒人保留区域の新機構について話していた。 テレビを消して、ちょっと勉強してみたが、まったく成果なしだった。ファシズム民法は、恋の思考で乱れに乱れた僕の頭脳には、あまりにヘヴィだった。 クラウディアのことが頭から離れなかった。 何度も何度もためらった末に、ついに、具合はどうかと携帯でメッセージを送った。それは、僕が気を悪くしていないのを示すためでもあった。 むなしく返事を待った。栄光を逃した週末に甘んじようとあきらめかけた時、呼び出し音が鳴った。彼女だった! 「クラウディア? 気分は良くなった?」と訊いた。 「ええ、良くなったわ。イタロ、今朝は、ごめんなさい」 「何かあったの?」 僕の質問には答えずに、彼女が言った。「よかったら、今晩、私の家に夕食を食べに来ない? 友達を二人、紹介したいの」 その誘いに僕は驚いた。彼女の家には、一カ月ほど前、重篤ではあったが、お母さんがまだ生きていた時に、一度だけ訪問したことがあった。 頭の中で矢継ぎ早の質問攻撃が繰り広げられたが、口から出たのは、たった一つだった。 「どんな友達?」 彼女の放心状態の原因は、その友達だったのかと思い至った。いや待てよ、クラウディアは「友達を二人」と複数形で言った。彼氏の可能性をほのめかしたいなら「男友達を一人」と言うはずだった。僕は、この希望にしがみついた。それでも、やはり、疑惑は不安要素の上にとどまった。 「大学で知り合った友達よ。ねえ、来られない? 八時に」と彼女がなおも重ねて言った。 僕はオーケーした。それから、電話を切り、興奮と不安に同時に襲われ、ベッドに身を投げた。 (続く)
訳:橋本清美(はしもと きよみ / Kiyomi Hashimoto)