裸の僕たちは、シーツを掛け、並んでベッドに横になっていた。 もう一つ、発見があった。クラウディアは煙草を吸った。ファシズム・ブルーを一本、僕に勧めてきたが、断った。 「あなたって、本当に変わり者!」と、僕が熱望し、いまや征服した、その唇に煙草をくわえて、彼女が言った。 「どうして?」 「煙草は吸わない、お酒は飲まない、慣習に従った服装をする。退屈でつまらない人になっちゃうわよ」 プライドが傷つけられた気はしたが、あまりに幸せだったので、頭にも来なかった。 「さっきの僕も退屈だった?」と思い切って彼女に訊いた。愛し合った直後に相手の女性に訊く類のことじゃないのは、巷で聞いて知っていた。 「あなた、初めてだったでしょ。賭けてもいいわ!」質問には答えずに、彼女は、そう言葉を返した。 「ああ、白状するよ。僕は買春するような男じゃないからね」と僕は顔を赤らめ、ひどい質問を付け加えた。「きみは、違ったの?」 彼女は頭を起こし、笑いだした。 「ほんとに、なんて人!」 僕は、また顔を赤くした。けれど、それら新事実についての考察は後回しにすることにした。全身全霊の力を込め、僕は、ついに、僕の心を彼女に打ち明けた。「クラウディア、好きだ! 僕の恋人になってほしい!」 彼女は僕を見つめ、微笑み、そして首を横に振った。それから、灰皿で煙草を消した。 「イタロ、あなたを好きよ。素敵だし、あなたには、純粋なところが間違いなくある。私、どう答えればいいのかわからない、私自身をとことんさぐってみなければ、これでもかっていうぐらいに。いろんなことを、納得がいくまで」 僕は、言葉が見つからず黙っていた。心臓が破裂しそうだった。彼女の顔つきが、なおいっそう真剣になった。 「私を好きだって、あなたは言った。違う私だとしても、好き?」 何を言おうとしているのか理解できなかった。 「違う? 何と違うの?」 彼女は、また上体を起こした。丸い豊満な裸の乳房がシーツの下から現れた。それから、不意に泣き出した。 「こんな重たいものを自分の中に抱えておくなんて、もう、できない!」と涙をこぼしながら言った。「母は、死ぬ間際に、私が知ることを望んだのよ! ちきしょう、恨んでやる!」 ヒステリーの発作に、僕は唖然となった。クラウディアの悩みごとが、一挙に、ついに明るみに出るのを目の当たりにしていた。僕はおびえた。 「どうして、お母さんを恨むの? きみに何を話したの?」 彼女は落ち着きを取り戻し、黙った。僕は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。なぜだか、自分が崖っぷちに立たされている気がした。 「真実よ!」と彼女が答えた。「真実よ!」僕の眼を見据えながら、彼女はそう繰り返した。 (続く)
訳:橋本清美(はしもと きよみ / Kiyomi Hashimoto)