音楽を聴く手段としてお馴染みのCD、そして以前から存在するレコードやテープレコーダーといった音楽メディアを再生して聴く方法には国境は存在せず、どの国で作られたものでも、どの国でも再生できるという強力な互換性があります。『輸入盤を買ったら再生できなかった』っていうことは、音楽メディアの世界では基本的に有り得なかったのです。 しかしながら、ビデオテープ、DVD、ブルーレイ等の映像メディアには国境があり、要件を満たす環境を用意しないと、他国では再生できないことがある、という事実とそれを回避する方法を今回のコラムでお話ししたいと思います。 特にイタリアPOPSのジャンルでは、映像メディアの日本版リリースは皆無に近いので、我々ファンはイタリアからの輸入盤を楽しむしか方法がありませんし、ここで紹介する回避方法は法を逸脱する行為ではありませんことを、予めお断りしておきます。 まずはビデオテープの場合は、アナログTVのカラー映像信号に制約を受けます。世界には大きく3つのカラーTV方式が存在し、この方式が一致しないと映像の再現ができません。この3大映像信号とその代表的な採用地域が以下となります。 NTSC :アメリカ、カナダ、日本、韓国、台湾、中南米 PAL :ヨーロッパ、中国、東南アジア、ブラジル、オーストラリア SECAM:フランス、旧ソビエト連邦諸国、アフリカ つまり日本の一般的な再生環境(=NTSC環境)では、PAL方式を採用しているイタリアのビデオカセットなどは再生する事はできないのです。 この障壁を回避する方法はいくつか在るのですが、ややマニアックな手法となることと、現在はビデオカセットの需要が激減していることとなどから、今回のコラムでは解説を割愛したいと思います。 さて現在、映像メディアの主流となっているDVDの場合についてお話しましょう。市販のDVDソフトには、このアナログのカラー映像信号の制約に加えて、さらに『リージョンコード』という障壁が設けられていることが一般的です。 以下がリージョンコードのグループと適応国の一覧です。 1:米国、カナダ 2:ヨーロッパ、南アフリカ、日本 3:韓国、香港、東南アジア 4:オーストラリア、中南米 5:アフリカ、アジア、東ヨーロッパ、ロシア 6:中国 アナログTVのカラー映像信号という障壁に、これらリージョンコード規制を追加するというダブルの制約を設けられた結果、DVDソフトには視聴制限の国境を設けられてしまった国が出てくる事となりました。こうして日本では通常、ほぼ日本のDVDソフトしか閲覧する事ができなくなりました。 ※リージョンコードはアメリカの映画産業界からの圧力によって設けられました。 これを回避するのには、いくつか方法があるのですが、イタリアのDVDを日本で視聴するというニーズに限定すれば、最もお手軽な方法は『パソコンで視聴すること』です。 リージョンコードは日本もイタリアも同じ『2』ですから、日本のPCで再生が可能です。そして映像はデジタル信号としてPCモニターに映されますので、本コラム冒頭に述べたアナログのカラー映像信号の相違に影響を受けません。 こうして多くの日本のリスナーは、追加投資額がゼロでイタリアのDVDを鑑賞する事が出来るのです。さらに映像出力端子が付いているPCでは、あたかもPCをDVDプレイヤーのように使って、TVやプロジェクターで視聴することも可能になると思います。 PCは持ってないけど、どうしてもTV画面で視聴したいという方には、『マルチ対応DVDプレイヤー』と呼ばれるような、NTSCとPAL再生に対応し、NTSC出力を備えたリージョンフリーのDVDプレイヤーを入手されることをお勧めします。 日本の大手一流メーカーは、この手の『マルチ対応DVDプレイヤー』はほとんど生産していませんが、海外メーカーや海外向け製品を手掛けている日本メーカーの中には、こうした製品を手掛けているところが多くあります。また安価なものは5,000円ぐらいの価格帯から選べますので経済的にも大きな負担にはなりません。 さて、現在普及しつつあるブルーレイになると、また異なるグルーピングのリージョンコードが制定され、3つのリージョンコードが設けられました。 A:南北アメリカ、東南アジア、日本、朝鮮半島、台湾 B:ヨーロッパ、中近東、アフリカ、オセアニア C:中央・南アジア、中華人民共和国、ロシア、モンゴル 『日本でイタリアのブルーレイ映像作品が見たい』、というニーズに照らし合わせてみると、日本はリージョンA、イタリアはリージョンBと分かれてしまったので、残念ながら日本のPCでイタリア盤ブルーレイは閲覧はできない、という壁にぶち当たることとなりました。 幸か不幸か、DVDの普及が遅れたイタリアでは、やっと数年前にDVDが主流となる時代が到来したばかり。それゆえ、ブルーレイ時代が始まるのはまだまだ先と思われ、現在のところ、イタリアPOPSのブルーレイ作品はまだ数えるほどしかリリースされていませんし、ブルーレイだけでしかリリースされていないソフトもありませんので、当面のところ、日本のイタリアPOPSファンにはブルーレイ対応を考える必要はないと考えています。 今後、イタリアでブルーレイ時代が到来した際には・・・この件については、またの機会に譲る事にしましょう。 また音楽ダウンロードの隆盛に付随するように、映像のダウンロード販売も始まっており、日本でもイタリアのPOPアーティストの一部の映像作品が購入可能になってきていますので、併せてお試しください。(世界共通のPC技術を基盤にしているので、日本の環境に制約を受けません) 今回のコラムで紹介する映像は、おそらくイタリア人POP/Rockアーティストの中で最も早く公式DVDをリリースしたと想定されるVasco Rossi(ヴァスコ・ロッスィ)です。1999年リリースのライヴDVD「Rewind」に敬意を表し、当時のライブ映像から。 ※Vasco Rossiの紹介記事はこちら Piccola RADIO-ITALIA YoshioAntonio こと 磐佐良雄 ***** 今回ご紹介した曲の収録アルバム ***** アルバム:Rewind(リワインド) アーティスト:Vasco Rossi(ヴァスコ・ロッスィ) ***** 東京ガス主催『秋のイタリア収穫祭』イベント出演のお知らせ(予定の内容) ***** キッチンで思わず口ずさみたくなるようなイタリアPOPS作品を中心に、音と映像でご紹介いたします。 日時:2011年11月19日(土) 13:00~14:00 会場:東京ガス・新宿ショールーム アクセス・地図:アクセス・地図 参加費:無料 ※詳細は以下のサイトで随時更新されます。 『秋のイタリア収穫祭』 http://piccola-radio-italia.com/
”きいてみ~よ!” ~ イタリアPOPSのススメ ~ 第7回 2011-10-28