毎年のことながら春の到来が遅い北の大地もようやく暖かくなってきたようです。 もう少し気温が上がれば行楽にでも出かけて、美しい景色を見ながらビールでも飲むのにとてもよい季節になります。 そういえばこんなCMもありました。 イタリア語の歌を使ったCMの中では、もしかすると一番よく知られているかもしれません。 これはキリンの発泡酒のCMで、 オフィシャルサイト でも見ることができます。 この曲「ヴォラーレ」(Volare)は、長いあいだこの発泡酒のCMに使われていて、とても有名になりました。 いかにもラテン系といった陽気なノリがビールによく合っています。 歌っているのは、日本でも有名なジプシー・キングスです。 全曲はこちらです。 でも、これ実はイタリア語ではないのです。 ジプシー・キングスはフランスのバンドで、フラメンコに影響を受けた曲作りを行なっており、 この曲はスペイン語で歌われています(「ヴォーラーレ~」の辺りのサビの部分はイタリア語です)。 イタリア語とスペイン語は、同じラテン系の言語ということもあって、音の響はよく似ています。 さらには、「ヴォラーレ」はジプシー・キングスのオリジナル曲ではありません。 彼らが歌っているのはスペイン語カヴァー曲であり、 実はそのオリジナルを歌ったのが、イタリアの歌手ドメニコ・モドゥーニョ(Domenico Modugno)です。 ドメニコ・モドゥーニョが歌う「Nel blu dipinto di blu」(青に染まった青の中)が、そのオリジナル版で、 アメリカでは「Volare」(飛ぶ)のタイトルでレコードが発売されたので、このVolareというタイトルでよく知られています。 1958年のサンレモ音楽祭大賞曲であり、1959年の第一回のグラミー賞でも最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を獲得しています。 実はこのドメニコ・モドゥーニョのオリジナル版も、以前CMに使われたことがありました。 ジプシー・キングス・ヴァージョンとは大分印象が違うのがお分かりかと思います。 オリジナルの方がしっとりとした感じで、実にイタリア歌謡っぽいです。 ビールのCMは陽気に、車のCMは優雅に、と実にぴったりのヴァージョンが使われています。 サビの辺りの歌詞は以下の通りです。 poi d'improvviso venito dal vento rapito e incominciavo a volare nel cielo infinito Volare oh oh Cantare oh oh oh oh Nel blu dipinto di blu そして突然風が吹いてきて ぼくは無限の空を飛びはじめたんだ 飛んで! 歌って! 青色に染められた青空の中…… 何ともファンタスティックな内容ですが、歌の出だしでは「こんな夢を見ることはもうないだろう」と歌われていまして、 実はこれ夢の話なのです。 たとえ夢の中だったとしても、真っ青の空の中を風とともに空高く舞うなんていうのはとても気持ちがいいことでしょう。 そんな夢を見たいものです。「ヴォ~ラ~レ~、カンタ~レ~」のところは実に印象的なのに、とても簡単で、 イタリア語を知らなくても、そこだけでもいっしょに歌うことができると思います。 こういうところもおそらくは世界的に大ヒットした要因なのでしょう。 今ではカンツォーネの代表曲になっています。
イタリア音楽コラム ~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第2回 2009-05-15