イタリアの代表的スクーターと言えば、なんといっても、映画『ローマの休日』にも登場したヴェスパでしょう。 日本でも人気の高いスクーターです。 ヴェスパではないですが、以前スクーターのテレビCMにイタリアの歌が使われていたことがありました。 今回はそのCMを取り上げてみましょう。 そのCM単体の動画は見つからなかったので、ちょっと長いですがスクーターのCMをいくつかまとめた動画をご覧ください(5分頃から目的のCMがはじまります)。
ホンダの〈タクト〉というスクーターのCMがお目当ての映像です。 これは1984年頃のCMだそうで、このスクーターの名前はぼくの記憶の片隅には残っていました。 バックに流れているのは「Mamma Maria」という曲で、 歌っているのはリッキ・エ・ポーヴェリ(Ricchi E Poveri)。 前シリーズのコラムでも、「ケ・サラ」(Che sara')をという曲をご紹介しました (この歌は日本でも有名なのでご存知の方も多いでしょう)。 男女それぞれ二名ずつのグループで、「Mamma Maria」を歌っていた当時は、 すでに一人脱退、三名のグループになっていました。
サビの部分が、歌詞、メロディともとても印象的です。 「マン、マン、マンマ~」と、しばらく歌声が頭から離れません (きっとこの部分だけ覚えているという方もいるでしょうね)。 CMで歌われている部分の歌詞はこうなっています。 Un gatto bianco con gli occhi blu un vecchio vaso sulla TV Nell'aria il fumo delle candele due guance rosse, rosse come mele 青い目をした白い猫 テレビの上には古い壺 漂うキャンドルの煙 リンゴのように真っ赤なほお ma ma ma mamma Maria ma ma ma ma mamma Maria ma ma ma ma mamma Maria ma ma ma ma mamma Maria ma マ・マ・マ・マンマ・マリア・マ…… (でも、でも、マンマ・マリア) Mammaはイタリア語で「お母さん」という意味ですが、この場合はちょっと意味合いが違うようです。 たぶん、「渋谷の母」とか「新宿の母」とか、はたまた「銀座の母」とか、そんな意味でしょう。 この歌はCMの部分の後、このように続きます。 Ha un filtro contro la gelosia o una ricetta per l'allegria legge il destino ma nelle stelle e poi ti dice solo cose belle ジェラシーを抑える秘薬はある? 陽気になれる薬の調合法は? 星占いで運勢を読むけれど 君に告げるのは、いいことだけ その後、歌詞は、「いいことばっかり言わないで、ちょっとは本当のことを言ってよ。 この愛は本物なのかどうか知りたいんだ」と続きます。 たぶんこれは占い師のマンマ・マリアのところに行って、 恋占いをしてもらっている歌なのでしょう。 スクーターとはあまり関係ないですね。 占いは、日本では新聞にすら毎日コーナーがあるくらいポピュラーですが、 イタリアでも日々の生活にしっかり根づいています。 例えば、イタリアで人気の数当ての宝くじでは、 賭ける数字を夢占いで決めるのが伝統になっていますし、 それに使う夢占い本「スモルフィア」もよく売れているそうです。 このあいだイタリアの宝くじ〈スーパーエナロット〉を当てて億万長者になった方がいたと話題になっていましたが、 その方も夢占いしたのかもしれませんね。
イタリア音楽コラム ~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第7回 2009-10-16