車、発泡酒、パソコン、お笑い、映画、車、スクーター…… このコラムでは、身近で耳にしてきたイタリアの歌をこれまでいろいろと探してご紹介してきました。 どんな商品のCMにイタリアの歌が使われることが多かったかと言えば、 まだはっきりとはしませんが、車関係が頭一つ抜け出した、といったところでしょうか。 今回は車のCMですので、車関係がまた少し差を広げることになりますね。 これは1987年頃のホンダ・レジェンドのCMです。 美しい自然の風景の中を、孤独に、そして優雅に走っていく車に、 この物悲しくも美しい音楽がなかなかいい味付けをしていると思います。 使われている歌は、イヴァ・ザニッキ(Iva Zanicchi)の「Testarda Io」(強情な私)ですが、 「心遥かに」の邦題で親しまれています。 1974年にシングルレコードとして発売された曲で、当時日本盤も出ていたそうです。 この曲は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『家族の肖像』でも、なかなか印象的な場面で使われていましたので、 そちらで耳にしたことのある方もいるでしょう (もしかすると、CMにこの歌を使おうと発案した方は、なにより映画のことが頭にあったのかもしれませんね)。 イヴァ・ザニッキは1940年生まれ。 イタリア歌謡界の大御所で、同世代の歌手にはミーナやミルヴァがいます。 歌詞はこんな感じです。 Non so mai perche' ti dico sempre si' testarda io che ti sento piu' di cosi' e intanto porto i segni dentro me per le tue strane follie per la mia gelosia どうして私はいつもあなたのいうままなのだろう それ以上にあなたを感じる強情な私、 それに私の心にはしるしが刻まれている あなたの馬鹿げた奇行のしるしが 私の嫉妬のしるしが La mia solitudine sei tu la mia rabbia vera sei sempre tu Ora non mi chiedere perche' se a testa bassa vado via per ripicca senza te 私の孤独はあなた 私の本当の怒りはあなた 理由は今は聞かないで どうして私がうなだれて去るのか 腹いせにあなたなしで …… よく分かりませんが、愛のもつれの果てに恋人の元を去る女性、といった歌なのでしょうか。 ともかくも、邦題の「心遥かに」がかもしだすさわやかさや、 優雅に走るホンダ・レジェンドとはまったく違って、なんだかどろどろとしたものを感じます。 後の方では、「あなたを地獄に落としてやりたい」なんていう物騒な台詞も出てきますし。 くわばらくわばら。 なお、2008年に、スカ&レゲエバンドのGiuliano Palma & The Bluebeatersが 2008年にこの曲のカヴァー・ヴァージョンを発表しています。 スカのリズムで、これはこれでノリもよくて楽しいのですが、 原曲にあった愛の情念みたいなものが薄れてしまっているのはちょっと残念です。
イタリア音楽コラム ~ 記憶の中のカンツォーネ ~ 第8回 2009-11-16