~ イタリア語の歌を聴いてみませんか? ~ 01.Premiata Forneria Marconi / ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第1回


01.Premiata Forneria Marconi / ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第1回
《L'amante della musica》

お久しぶりです。再び始まったこの音楽コラム、今シリーズでは、イタリアのロックバンドを紹介していこうと思います。 イタリアはまさしく音楽の国、歌の国。ロックバンドだって数多く存在しているわけですが、とりあえず1組挙げろと言われれば、 これしかありません、PFMこと、Premiata Forneria Marconiです。70年代に世界的に成功を収めたバンドです。

■River of life


この曲「River of life」は、アルバム『Photo of Ghosts』(邦題 幻の映像)の一曲目。私の学生時代、友人にこのアルバムを聴かせてもらい、 それ以来イタリアのプログレッシブ・ロックにはまって、いまだに抜け出せていないという思い出の一枚でもあります。 そんなふうに、このアルバムからイタリアのプログレにはまったという方も多いのではないでしょうか。 もう40年も前の作品ですが、今でも色褪せない名盤です。

プログレッシブ・ロックって何?と聞かれても、きちんと答えるのはなかなかやっかいで、そもそもジャンルの定義は難しいものだし、 とりあえずは、1960~70年代にクラシックやジャズといったさまざまな要素を取り込んで新たな音楽スタイルを模索する中から生まれたロックのスタイルだとしておきましょう。 日本ではよく「プログレ」と略されます。「River of life」はいかにもプログレ然とした曲なので、これを聴いていただけると、 プログレッシブ・ロックがどんなものなのか、なんとなく雰囲気はつかめるのではないかと思います。 今ではとても「プログレッシブ=進歩的」であるとは言えないけれども、逆に今こそ、進歩や前進といった価値観の束縛から解放されて、 プログレをロックのひとつのスタイルとして気楽に楽しむことができるのではないでしょうか。

さて、Premiata Forneria Marconiは、前身バンドであるI Quelliの一部メンバーと、 バイオリンとフルートの奏者だったMauro Paganiとで結成されました(なお、I QuelliのメンバーだったギタリストAlberto RadiusはI Quelliを脱退した後、Formula3を結成します)。 イタリアで2枚のアルバムを出した後、1973年作の『Photo of Ghosts』で世界進出を果たします。 そのせいもあって、このアルバムは1曲を除いてすべて英語で歌われています。 とはいえ、やはりロック・イタリアーノなら、歌詞はイタリア語の方がしっくりきます。 そんなわけで私の一押しは、イタリア語で歌われているデビューアルバムの『Storia di un minuto』(1972年)と2枚目の『Per un amico』(1972年)。 この2枚目のアルバムには、上記の曲のイタリア語版「Appena un po'」が収録されています。聞き比べてみると面白いです。

■Appena Un Po'


PFMはメンバーチェンジを行ないつつ、音楽スタイルの変化も伴いながら、何度か活動休止期間を経た後、近年、活動を再開しました。 昨年2010年には、シンガーソングライターの故Fabrizio De Andre'の名盤『La Buona Novella』(1970年)のカヴァー盤『A.D. 2010 - La Buona Novell』を録音しています。 PFMはDe Andre'と関わりが深く、De Andre'のバックバンドをつとめていた時期もありました。 もともと、De Andre'の『La Buona Novella』にはPFMの前身バンドI QuelliとMauro Paganiが参加していましたので、 カヴァー盤というより40年目のリメイクと言った方がいいかもしれません。

2009年の4月6日、イタリアのアブルッツォ州ラクイラ県で地震が起こり、多くの人たちが被災しました。 この地震から2週間後に、イタリアのミュージシャンたちがミラノに集まり、ある曲を録音し、チャリティーCDを制作したのですが、 その曲はPFMの元メンバーMauro Paganiの名曲「Domani」(明日)でした。 この曲の歌詞を一部変更して、被災者支援のための曲「Domani 21-4-2009」が制作されたのです。 集まったミュージシャンたちがそれぞれこの曲の一節を歌っています。 ちなみに下の動画の4:47あたりでバイオリンを弾いているのがMauro Paganiです。

■domani


現在、日本は大変な苦難の中にありますが、明日への希望が歌われているこの曲は、そんな状況の中で、まるで力強い祈りのように聞こえてくる気がします。


次回からも、すでに解散してしまった昔のバンドから絶賛活躍中のバンドまで、個人的にお気に入りのバンドを毎回一組ずつご紹介していきたいと思います。ご期待ください。

イタリア音楽コラム
~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第1回
2011-04-29