今回ご紹介するのはStormy Sixです。 このバンドは主に60年代末から80年代半ばにかけて活動していました。 活動期間が長いせいか、音楽スタイルは時期によってかなり変化しています。 初期のビートロック的なスタイル、そしてポリティカルなフォークロック、さらには、 「Rock in opposition」活動に参加していた頃のチェンバーロック(弦楽器や管楽器主体のロック)、 とその時々においてスタイルは変われども、どれを聴いても、 「ああStormy Sixだなあ」と思ってしまうのは、きっと何かそこに一貫したものがあるのでしょう。 初期の名曲といえば、個人的には「Sciopero!」。 陽気な雰囲気とはうらはらに、1863年8月にイタリア、 ナポリ近郊の町ポルティチで起きた労働者虐殺事件を歌っています。 ■Sciopero!
そして、フォークロックの時代の名曲は、何と言っても1975年発表の「Stalingrad」でしょう。 第二次世界大戦の独ソ戦におけるスターリングラード攻防戦を歌った曲で、反ファシズムのメッセージが込められた曲です。 寂しげだけれどどこか力強さを持った曲です。 この曲はフォークロック時代だけではなく、Stormy Six全期を代表する一曲だと言えるでしょう。 ■Stalingrad
この曲はスカ・パンクバンドのBanda Bassottiや、フォークロックバンドのYo Yo Mundiもカバーしています。 聞き比べてみるのも面白いでしょう。 70年代末、イギリスのロックバンドHenry Cowの主導により、国境を越えたインディペンデント系、 アヴァンギャルド系のバンドを世界に紹介する組織かつ運動体である「Rock in Opposition」(反対派ロック)が展開されます。 この運動にさまざまなバンドが参加しましたが、Stormy Sixもこれに参加します。 この時期に出した名盤が、管弦楽器を前面に押し出した『Macchina Maccheronica』であり、以前とはスタイルが大きく変化しています。 ■Macchina Maccheronica
1982年にNew Wave色の強い『Al Volo』を出した後、バンドは一時解散します。 ■Non Si Sa Dove Stare
バンドは休止期間を挟んで、90年代半ばに再結成、現在もギタリストのFranco Fabbriを中心に活動を行なっているようです。 Franco Fabbriは国際ポピュラー音楽学会の創設メンバーの一人であり、2011年現在はイタリア支部の会長で、大学でも教鞭をとっています。 時代に合わせたスタイルを模索して変化を続けながら、なおかつStormy Sixらしさを失わない音楽的な懐の深さ、 そのあたりにこのバンドの魅力はあるのだと思います。
イタリア音楽コラム ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第3回 2011-06-24