とりあえずはこの曲を聴いてみてください。有名な曲ですのでご存知の方も多いでしょう。
曲自体は日本のロックバンドThe Blue Heartsの「情熱の薔薇」なのですが、オリジナルとはどこか違う。 それもそのはず、これは他のバンドがカバーしたもの。そのバンドが今回ご紹介するBanda Bassottiです。 イタリアのパンクバンドBanda Bassottiは、フジロックフェスティバルに参加するため、2002年に初来日を果たしました。 2005年にも同フェスティバルに参加しており、これまで本コラムで紹介したバンドの中でもかなり日本で馴染みがある方だと言えるでしょう。 彼らのアルバムの邦盤も何枚か発売されており、日本オリジナルのベスト盤も出ています。 2006年のアルバム『Vecchi cani bastardi』では、The Blue Heartsの「情熱の薔薇」を日本語で歌っています。 日本語の発音はイタリア人にも馴染みやすいようで、なかなか様になっていると思います。 バンドの結成は1987年。しかし彼らは音楽専業というわけではなく、メンバーはいわゆる肉体労働者であり、そもそも結成の経緯が、 労働者階級を基盤とした社会運動を行なう中で、音楽によってそうした運動を支援するというものでした。 1996年に一度解散した後、2001年に再結成し、現在でも活動を続けています。 昨年2010年には、2枚組ライブアルバム『Check Point Kreuzberg』を発表しています。 前年にベルリンのクロイツベルク地区にあるライブハウス〈SO36〉で行なった演奏を録音したもので、 もちろんアルバムタイトルは、チェックポイント・チャーリー(かつて存在した東西ドイツの国境検問所の呼び名)をもじっています。 このライブ盤にも収録されている彼らの代表曲が「Avanzo de cantierere」や「Figli della stessa rabbia」です。 ■Avanzo de cantierere
■Figli della stessa rabbia
オリジナル曲だけではなく、彼らはさまざまなプロテストソングを積極的に歌ってきました。 例えば、イタリア・パルチザンの歌である「Ciao Bella」や、労働者賛歌の「Bandiera Rossa」といった伝統歌も歌っており、ライブでは定番になっています。 ここで「Luna Rossa」(赤い月)をご紹介しておきます。 この曲は、ミラノのフォークグループYu Kungの1976年のアルバム『Pietre della mia gente』に収録された名曲「Piazza Fontana」のカバー曲です。 Piazza Fontana(フォンターナ広場)はミラノにある広場の名前ですが、1969年12月12日に、この広場の側にあった銀行で爆弾テロが起き、 大勢が犠牲となりました(これは、同時刻にローマやミラノの別の場所でも爆弾が爆発するという同時多発テロでした)。この歌はその事件を歌っています。 ■Luna Rossa
「イタリアのクラッシュ」という紹介文をよく目にしますが、The Clashに影響を受けたことをバンド自身が表明しています。 The Clashがそうであったように、Banda Bassottiもその出自から当然ですが、非常に政治的な主張を行なうバンドであり、 イタリア国内外のさまざまな社会事件や社会問題を取り上げ、あからさまなほどに左翼や反ファシズムの旗を掲げ、 労働者階級の視点から今日もメッセージ色の強い歌を歌い続けています。
イタリア音楽コラム ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第4回 2011-07-29