~ イタリア語の歌を聴いてみませんか? ~ 09.CSI, PGR, Giovanni Lindo Ferretti / ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第9回


09.CSI, PGR, Giovanni Lindo Ferretti / ~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第9回
《L'amante della musica》

今回は前回に続いて、CCCP解散後のGiovanni Lindo Ferrettiの音楽活動の軌跡を辿ってみましょう。CCCP解散後、Giovanni Lindo FerrettiとMassimo Zamboniが中心となって新たなバンド、CSI(Consorzio Suonatori Indipendenti:独立演奏者組合の意)が結成されます。新バンドといえ、メンバーはほとんどCCCPと変わらず、看板を取り替えての仕切り直しと言っていいでしょう。CSIは、パンクの枠を越えてポストパンク、ニューウェイブへと進んでいった後期CCCPの方向性をそのまま継続発展させています。それとともに、いろいろなミュージシャンとのコラボレーションにも乗り出します。

■Fuochi nella notte di San Giovanni


これはCSIのデビューアルバム『Ko de mondo』(1994年)からの一曲ですが、このライブバージョン(『Noi non ci saremo Vol. 1』に収録)では、Goran Bregovicを加えてさらにアグレッシブな演奏になっています。サラエヴォ出身のGoran Bregovicは、映画『アンダーグラウンド』の音楽担当で有名ですが、間奏での管楽器パートがまさにブレゴヴィッチっぽくてニヤリとさせてくれます(ちなみに、映画『アンダーグラウンド』はちょうど今(2011年12月)、デジタルリマスター版が特別公開されていますので、興味ある方はぜひご覧ください)。

また、1998年にはRobert Wyattのトリビュートアルバム『The Different You』に参加。このコラムでも取り上げたことのあるAreaやMauro Paganiもこの企画に参加していますが、CSIはこのアルバムでワイアットの「Chairman Mao」をカヴァーしています(CSIのライブ盤『Noi non ci saremo Vol. 2』にも収録)。さらに、このアルバムにゲスト参加したワイアット自身が歌ったのが、CSIの名曲「Del Mondo」でした。

■Del Mondo


2001年にCSIは解散し、Giovanni Lindo FerrettiはPGR(Per Grazia Ricevuta:神の恩寵への感謝の意)を結成します。しかし、ここで長年の盟友だったMassimo ZamboniはPGRには参加せず、ソロとして独自の活動を行なっていきます。

PGRの最初のアルバムは、古くはアヴァンギャルドバンドZNRで有名なフランスのミュージシャン、故Hector Zazouがプロデュース。Zazouらしいエクスペリメンタルなワールドミュージック風味の加わった一品に仕上がっています。

■Settanta


PGRは2009年に解散しますが、その翌年にイタリア音楽界の大御所Franco Batttiatoをアレンジに迎えたPGRセルフカヴァー・アルバムが発売されています(『ConFusione : 9 canzoni disidratate da Franco Battiato』(2010年))。そういえばGiovanni Lindo Ferrettiの歌い方はCCCP時代から、力の抜けた感じがどことなくBattiatoに似ているような気もします。

■Cronaca montana(『ConFusione』ヴァージョン)


こうしたバンド活動と並行して、彼はイタリアの伝統音楽に積極的にコミットしていきます。例えば、毎年夏に行なわれているサレント地方の伝統的なダンス音楽〈ピッツィカ〉を中心とした音楽祭「Notte della Taranta 2004」に参加。さらには、プーリア地方の伝統音楽に関する音楽ドキュメンタリーとドラマパートをミックスさせた映画『Craj』(2005年)に出演しています。また2004年には、蛇腹楽器奏者のAmbrogio Sparagnaとともにトラッド風味のカトリック聖歌集『Litania』(2004年)を制作しています。彼がこんな宗教歌集を出すなどCCCP時代にはとても考えられないことであり、このアルバムはなかなか衝撃的でした。

■Te Deum(『Litania』より)


このように近年のGiovanni Lindo Ferrettiの活動は、CCCP時代以上に多彩なものであり、彼はさまざまな音楽ジャンルへの挑戦に大きな意欲を見せていました。残念ながらこの数年は目立った活動が見られませんでしたが、前回書いたように、今年に入って再び音楽界に戻ってきた彼が今後何を見せてくれるのか、とても楽しみです。

イタリア音楽コラム
~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第9回
2011-11-30