4月に東京で予定されている「イタリアン・プログレッシブ・ロック・フェスティバル」。このライブシリーズはこれで2回目だそうですが、今回も往年のバンドがいろいろと来日するそうです。 I Pooh、le Orme、Locanda delle Fate、New Trolls-UTと、まるで過去にタイムスリップしたかのような、眩暈を覚える垂涎のラインナップ。 それに、何とFormula 3まで。ぜひ見に行きたいのだけれど、残念ながら行けそうにありません。 そんなわけで今回は期待を込めて、Formula 3を取り上げます。もう20年以上も前になりますが、私がイタリアのプログレッシブ・ロックを聴き始めた頃、お気に入りだったバンドです。 特に好きだったのが1枚目と2枚目のアルバムで、今でも時々CDをひっぱり出しては聴いています。それにしても70年代のバンドって、ふと思えばもう40年も前の音楽なのですね。 ちょっと前までは、ちょっと前の音楽という気がしていたのですが。今ではもうかなり前の音楽になってしましました。時の経つのは早いものです。 ■Non è Francesca おまえは間違っている おまえが見たのはフランチェスカじゃない 彼女はいつも家で俺を待っているんだ フランチェスカじゃない…… サイケ風味のビートロックという感じで、古くさい音に聴こえるでしょうが、それがすごくいいのです。「Non è Francesca」はデビューアルバム『Dies Irae』(1979年)に収録。 イタリアのロック&ポップス界の巨人Lucio Battistiの曲ですが、こちらの方を先に聴いたせいか、しっとりとしたBattisti版よりも気に入ってます。 Formula 3は、Alberto Radius(ギター、ヴォーカル)、Tony Cicco(ドラム、ヴォーカル)、Gabriele Lorenzi(キーボード)のトリオ。 現在キーボートはCiro Di Bitontoに変わっているようです。バンドの結成は1969年で、Lucio Battistiの書いた「Questo Folle Sentimento」を初のシングル盤として発表しました。 ■Questo Folle Sentimento 何がある、おまえの目の中に 俺の目の中に、何がある 俺は知っている、このときを 風の声が俺の中で大きくなる 音楽が鳴り響く、俺には聴こえない 人々は踊る、俺には見えない 赤い光、黄色い光 おまえは美しくなる もっと、もっと…… ああ、愛なんだ この狂った感情は…… 2曲ともCiccoがヴォーカルで、伸びのある甘い声が魅力的です。Formula 3はプログレの文脈で語られることが多いのですが、あまりプログレ本流を期待されると肩透かしを食らうので注意が必要です。 もちろんプログレっぽい曲もあるのですが(3枚目のアルバム『Sognando e Risognando』など)、基本的にはこういったビートロックが根っこにあり、彼らの魅力もそこにあるのだと思います。 以下、Radiusがヴォーカルを担当した2曲をどうぞ。Ciccoとは異なり、渋めの声がなんともいい感じです。 最初の「Storia di un uomo e di una donna」は3枚目のアルバム『Sognando e Risognando』(1972年)、次の「Bambina sbagliata」は4枚目の『La Grande Casa』(1973年)に収録されています。 ■Storia di un uomo e di una donna ■Bambina sbagliata Formula 3は4枚のアルバムを出した後、1973年に解散します。そして1990年に突如として再結成、『1990』や『King Kong』といったアルバムを出しますが、 1994年にバンドの産みの親とも言えるLucio Battistiが亡くなった後は、ずっとBattistiの曲を演奏し続けているようです。 それ以降どういう活動をしているのか私はよく知らなかったのですが、今回の来日を知ってとても驚きでした。大好きなバンドが今も健在であることを知り、とても嬉しく思います。 さて、このコラム「ロック・イタリアーノの軌跡」も今回を持ちましてひとまずお開きとなります。いつかまた機会がありましたらお会いしましょう。一年間どうもありがとうございました。
イタリア音楽コラム~ ロック・イタリアーノの軌跡 ~ 第12回 2012-03-30